十月の旅人[感想]

読書

 『十月の旅人』レイ・ブラッドベリ(伊藤 典夫訳)を読んだ。

 ブラッドベリのイメージは、何故か夏の夜に見る夢。
 タイトルからして秋なのに……初めてブラッドベリを読んだのが夏だったからなのだろうか。
 「十月のゲーム」「休日」「対象」「永遠と地球」「昼さがりの死」「灰の怒り」「過ぎ去りし日々」「ドゥーダッド」「夢魔」「すると岩が叫んだ」の10編。

 ブラッドベリという作家にはもっと感傷的な印象を抱いていたんだけれど、読み終わって残るのは、恐怖に傾いた幻想譚。悪意。
 夢と死、狂気と夢は意外なほど近くにあった。

 特に印象に残った短編について。

 「十月のゲーム」……地獄の釜のふたが開く祭日。誰かを苦しめたいという心底からの渇望は悪夢のゲームに結実する。まさか、いやそんな、まさか。

 「夢魔」……惑星に不時着し、救援を待つ男に訪れた恐怖。これは怖い。怖くて苦しい。締め方もなかなか。

 「過ぎ去りし日々」……あらゆる時に偏在する老人の姿は、記憶を旅しているかのようだ。短いながらも不思議な余韻。

 「休日」……これは私の思うブラッドベリらしい「感傷」。らしいと言いつつもこういうのがぐっとくる。最後の日、きっと私もこんな感傷を抱くだろう。

 「永遠と地球」……これが今回一番好きな短編。本読みとしての私は作中の老人に限りなくシンクロする。もっと、もっと書いてくれ。もっと読ませてくれ。その最高の作品を。愛すべき作家と読者の幸福な……幸福な関係。