MONKEY vol.2

読書

『MONKEY vol.2』は特集「猿の一ダース」、編者の柴田元幸さんが今読みたい作家さんということで、簡単感想を。

ブライアン・エヴンソン「ザ・パニッシュ」。罪。2人の少年の秘密から結末まで何とも言えず不穏。いじめっ子といじめられっ子、人生の勝ち組と負け組、そんな単純な上下関係では括りきれない2人の関係、単なる復讐譚じゃない。
なぜその結末から2人は逃れられないのか、ぼかされてるそこに何かがある。嗜虐性がきれいに隠れてる感じ。
不穏で怖い。

神慶太「川」、川をインテリアや衣装にする話。水が流れるのを眺めるように読める。不穏な短編に挟まれて収まりがいい。

ケリー・リンク「モンスター」、最近『スペシャリストの帽子』を読んだばかりだったので、女の子を書く作家さんという印象があったけど今度は少年達のキャンプの話。ちょっと母親視点な感じがする。うーん、すげー力技。モンスターにも色々いるよね。

川上未映子「彼女と彼女の記憶について」、主人公は過去の田舎の同級生たちを冷めた目で観察する芸能人という、私と世代が近いという以外は何ら感情移入する余地のない立場の女性の一人称なんだけど、不思議と読みやすい。観察する視点に偏りがないからかなあ。
そして予定調和の空気を一瞬で変えちゃう2文字の威力。気持ち良いくらい一気に非日常が侵食してきた。これ好き。

マシュー・シャープの超短編。歩き続けるうちに月に着いたとか、ゾンビが殺人者と同衾とか、日常の延長線上の非日常っぷりが、うーん、そこはかとなく変で好きかも。長編を読んでみたくなった。

スティーヴン・ミルハウザー「息子たちと母たち」、これは読む人によってリアリティも怖さのレベルも異なるんだろうなー。子どもの立場か親の立場かでも大きく違うんだろう。そういう違う世界が垣間見える。
過去と罪悪感にもったりと囚われる読み心地、嫌いじゃない。どうにでもとれる、同時に何種類もの意味を内包する深読みしがいのある台詞も。

小野正嗣「ウミガメの夜」、相変わらず視点がぐるぐる揺らぐ独特の文章で、この世界に入り込むまでは苦戦するけど、3人のおバカ大学生の旅がバカなくせに妙に切実で心掴まれる。

今回の特集はカラーがはっきりしてる感じ。
・なんとなく怖い
・うっかり日常を逸脱する
・人生も死も冗談めいている

柴田さんからの質問にいろんな人が答えるもう1つの特集は、ブラッドベリの『華氏451度』にちなんだ「もしあなたが、1人ひとりが1冊の書物を記憶する抵抗運動に加わるとしたら、何という書物を選びますか。またその理由はなぜですか」

選ばれた本よりも、この質問に対してどういうスタンスで臨むか、記憶それ自体が実現可能かどうか、記憶するのは誰のためか、過去のためか未来のためか、重点を置くのは失われる本か反抗運動なのか、回答者の個性が浮き彫りになって面白かった。

連載も相変わらず面白い。川上弘美の連載は単行本になるのが待ち遠しいなー。古川日出男の宮沢賢治リミックスはラストにもってくるテンションの上げ方がすごかった。