失楽園【感想】

読書

 革命に生き、挫折した盲目の詩人、ジョン・ミルトン。
 死刑を免れた彼が、創世記の楽園喪失を書いた壮大な叙事詩がこの『失楽園』です。

 地獄、天使と悪魔の戦い、エデンの様子など、想像力を駆使した壮大な描写なのですが、妙に卑近な場面もあります。

 かつてはルーシファと呼ばれ、今はサタンとなった悪魔の王。詩は、神に弓引くものたちが、敗れて地獄に落とされたところから始まりますが、ここでの悪魔たちの相談、サタンの懊悩、苦境に対して歯を食いしばり立ち上がるところ・・・・・・これは、まさしく「人間」そのものです。

 詩人の苦悩が普遍的な人間の苦しみとして読み取れます。

 と言いつつ、なかにはこんな部分もあったりして。

 これこそ願ってもない配偶者だと思う女にめぐり逢っても手遅れで、既に自分が、見るのも嫌で恥ずかしい、まるで仇のような女と夫婦の絆に縛られている、ということもあろう。

 ・・・・・・最初の結婚は失敗だったらしいが、ミルトン、こんなこと考えてたのか。

 私事になりますが、私はプロテスタントの家庭に生まれ、結局信仰を選ばなかった経緯があり、キリスト教文学に対しては、少しナナメから見てしまうところがあります。

 けれど、この『失楽園』には素直に引き込まれました。
 詩にはこれだけの力があるんだな、という感嘆。

 最後に、うなずくばかりの訳者後書きから引用します。

 自らの内なる地獄について悩む心があれば~(中略)~この遠い異邦人の作品もわれわれにとって無縁のものではないはずだ。