光が見えたときの話(物理的に)

たまに光が見えることがあった。
たとえば夜、寝ているとき。
うとうとしていると、急にぴかっと何かが光る。まるで懐中電灯の光を一瞬顔に浴びせられたみたいに。
空き巣かなにかかと慌てて起きて、窓から外を覗くが異変はない。おそるおそる部屋から出て、すべての部屋を見回っても特になにもない。それでも光を見たのは確実だから、落ち着かない気分でしばらく寝ずに様子を見ていた。
そういうことが、何度かあった。

ある日、部屋でくつろいで少しうとうとしていると、また何かがぴかっと光った。
間近でフラッシュを焚かれたように、一瞬の光。
気がついたのはそのときだった。あ、これ、この光って外からの刺激じゃなくて、自分の目の中で起きていることだと。
さっそく「光が見える」と検索すると、光視症という、視野の一部に一瞬光が走って見えるという症状が見つかった。まさにこれ。
原因は……加齢……加齢かー。
加齢に心当たりはなくもないが、それでも検査はしたほうがいいと書かれていたのと、最近少し視力が落ちたのか仕事中にパソコンの画面が見えづらくなってきているのが気になっていたのでそれも相談してみたくて、一応眼科に行ってみるかーと次の日さっそく近所の眼科を調べて出かけていった。

症状を話して視力検査、それから散瞳薬をして眼底検査。
どちらの目で光が見えたのかと聞かれると、あまり意識していなかったが、どちらかといえば右目かと思いそう言う。
「やっぱり加齢とかですかね?」と自虐的にお医者さんに言うと、
「いえ、網膜格子状変性ですね」
と返ってきて、格子状……? と首をひねると、わざわざメモに書いて見せてくれた。
元々網膜にレースのように薄い部分がある体質らしい。それで、その薄い部分に穴ができかけていると。
経過観察とするか、レーザー手術をするかどうか1週間様子をみて検討したい、と。
この時点ではレーザーをするのかしないのかお医者さんははっきり言わなかったが、さらっと
「手術になるので、○万円くらいかかっちゃいます」
と具体的に言われたときの感じが、次回それだけ持って来てねという意味かとなんとなく察した。
視野が欠けてくるとかなにか症状が出たら、即!来てね!と何度も念を押されてその日の診察は終わった。

パソコンの画面が見えづらくなったのは老眼のせいだった。
視力が悪くなったわけではなく高校生くらいからほとんど変わってなかったが、右が0.7、左が1.5と元々差があり、視力がいい方の左が老眼が進んでいるとかで、老眼鏡を作ることを勧められた。
ここで加齢が出てきたかーと思った。

別の日に診断書を持っていって梅田のアイリスメガネで仕事&読書用メガネを買った。
何年か前に相方のメガネの鼻あてが出先でポロリしたときに飛び込んだらすごく対応がよかったので、我が家はメガネ関係でなにかあるときは必ずそこに行くことにしている。

1週間後にまた眼科に行った。
早速散瞳薬をしてまた網膜をじっくり見てもらう。
「あ、穴ありますね。レーザーしましょう」
とあっさり言われた。
「この1週間で網膜剥離してたらどうしようって心配してたよ〜」
と。
知らないうちに実はけっこう切羽詰まってたのか…と思いつつ、その場でレーザー手術をしてもらった。

網膜裂孔をそのままにしておくと、そこから網膜剥離になっていくリスクがあるので、穴の周囲を焼き固めて剥離を防ぐということらしい。
網膜剥離っていえば大学生のときに友人が手術して1週間ほど入院していた記憶があるので、けっこう大事だ。早めに対処できるならするにこしたことはない。

目の手術ということでびびっていたが、レーザーは頭を固定されてレンズを覗き込んだ状態で、びかっびかっと光るのを見ていればいいので、痛いとかそういうことはなくてよかった。しかし目のきわきわの部分だったせいかかなり時間がかかって、待合室に患者さんがたまってしまい(待たせてごめんなさいね)他の患者さんの診察を挟んでまたやってもらったので、結果的にかなり長時間となった。
姿勢を固定された状態で座り続けるという方が大変だったかもしれない。主に腰。

今年いただいた特別定額給付金は、手術代と老眼鏡代にあっさり消えていった。
残りで『ハイキュー!!』全巻を大人買いした。

私は光が見える以外に飛蚊症などの症状はなかったので、「なんか光った」というのをぐぐって光視症にたどり着いた時点で、加齢のせいだろうと放置して眼科に行かなかったら、網膜裂孔がもっと進行してもしかしたら剥離してからやっと眼科に……というのもあり得たので、その時点で念の為にと眼科に行ってよかった。

なにかの身体的な症状が出たときにはまずネットで検索してしまうけれど、自分がそれに当てはまるかどうかは結局実際に病院に行って検査してもらわないとわからないので、勝手な自己判断をしてしまわないようにしようと改めて思った。