ゴルフ場殺人事件【感想】

読書

 ポアロの元に、自分の身に危険が迫っているから早く来てほしいという内容の手紙が届く。早速出発するポアロとヘイスティングズだが、到着した時、差出人は既に死体となっていた。
 フランスの名刑事ジローと競い合うポアロ。そしてヘイスティングズの前に現れる謎の少女シンデレラ。

 若く実際的な刑事ジローとの対決と共に、描かれるいくつかのロマンス、そして登場人物の女性の描写が面白い作品というのが第一印象。そしてロマンスがらみの情緒的な描写が格好のミスリードになっていて、それが巧み。クリスティーじゃない作家がこれをやったら、「ヘイスティングズ! このミスリードキングめ!」と言ってしまうところです。心理的なブラフが効いていて、それが明らかになっても不快じゃない。むしろ心地よいどんでん返し。

 再読になりますが、改めてこれはうまいなと思ったのは、凶器のナイフの使い方。そしてジローが切り捨てた意味のない証拠にひとつひとつ理由がつく、その気持ち良さ。
 また、若い恋人(?)たちに向けるポアロの視線の優しさも目を引きます。

 登場人物たちの未来に、お幸せに、と祈って本を置く、そんな一冊です。

 クリスティー文庫版の解説は、ポアロファンなら名前は覚えてなくても声は覚えているはずの熊倉一雄さん。デヴィッド・スーシェの声の吹き替えをされた方です。解説というよりは吹き替えにまつわるエッセイで、興味深いものです。