マイケル・マーシャル・スミスを初めて知ったのは、衝動買いした短編集『みんな行ってしまう』でした。
独特の世界観とテンポを持った一人称です。
読み始めてから波長が合ってくるまで、少し時間がかかりました。
舞台は恐らく未来。誘拐された重要人物を取り戻す依頼を受けた主人公。
現代とは大きく違う、近隣区というルールのある世界を歩き回る描写。
ハードボイルドを気取っているのに、妙に……自分と他人の境界がすごくあやふやで、読んでいて不安になってくる、見たことがあまりない種類のナイーヴな主人公。
主人公と道連れがたどる未知の世界、悪夢の世界での冒険は、妙に親密で……なんていったらいいんだ、この感じ。
印象に残る言葉がいくつもあって、違う年齢の時に読んでいたら、もっと熱にうかされたように夢中になったかもしれない。
自分だけの箴言を手に入れたような気になるかも。
気に入った台詞をちょっとメモ
反乱や扇動は夜中の考え、午前二時の思考、疲れた目とブラック・コーヒーの産物だ。 嫌だと思って喧嘩別れした当の相手が、自分にとって世界じゅうの誰よりも必要な人間だってことを、他人はまったく実感できない。 子供のように世界に対して心が開いてる人間にとって、現実なんて必要ないものの代表格なんだから。
いろいろ荒削りで、若くて、不安定で、本気で、そして心の奥底に眠っていた記憶はこんなにも美しい。
って、一人称が嘘つきって始末におえないよ! バカ! 大好き!
