トマス・ピンチョンの初期短編集。
著者自身が序文でその若書きを批判しているけれど、むしろそこが興味深い。
高橋源一郎の解説から引用させてもらうと、
そこには、駆け出しの、文学的野心に充ちた、若い作家がたしかにいる。
ということです。
まあ、全体的には作者の意図は分かるんだけど、細かな読みドコロはかなり見落としてるだろーな、というあやふやな読者なので、あまりえらそうなことは言えない。
それぞれの短編に印象的で魅力的なシーンがあって、それはとある現場にかり出された兵士同士の会話だったり、秘密基地での少年たちのやりとりだったりするんだけど、いちばん気に入った短編は「秘密裡に」。
それはエジプトで暗躍するスパイたちの物語で、淡々と追いかけっこが続き、登場人物はそれなりに饒舌だけど無声映画を思わせる。おかしみとかなしみと人間が人間や社会に対して感じるかすかな恐怖の描写がたまらない。

