最近の読書

読書

 公私ともにてんてこまいで(てんてこまいって何だ)、読書の余裕がなかった8月だけど、思いがけず実家に行かねばならない用事ができたので、ちょっとだけ復活。

 というわけで、前回から今までに読んだ本についてメモなどを。
 メモなので、ちょいと乱暴です。

 『獄門島』(横溝正史/再読)
 横溝正史の主だった作品は、中学生の頃にまとめて読んでいるので、一応再読。
 改めて読んでみた印象は、物語の最初から最後までを覆う狂気に結局のところ尽きるなあ。殺されるために生まれて来たかのような美少女の狂態、真犯人の陥った妄執、そして最後に待っていた真実。
 犯人がアレなのは、今ミステリを読みなれた目からするとちょっと物足りないように思うけれど、それを納得させられるだけの物語がここにある。

 『陸橋殺人事件』(ロナルド・A・ノックス)
 ものすごくイギリス。以前『まだ死んでいる』を読んだ時も思ったんだけど、死体を挟んだイギリス流のユーモアたっぷりの殺人喜劇の面白さが私は大好き。
 この作品でのノックスの狙いは、今から見たらあんまり意味がなくなっていて、今の読者が読んだら肩透かし感だけが残ってしまうかもしれない。
 でも大好きなんだな。

 『夜歩く』(ディクスン・カー)
 堂々と密室をひっさげてやってきたカーのデビュー作だそうで。バンコランもの。
 真相には思わず笑う。最後の一文もなあ。かなり犯人を弁護したいぞ。
 ムリめなトリックでも話がよければ楽しめる方だけど、これはちょっと雰囲気が過剰で途中で胸やけしそうだった。

 『赤々煉恋』(朱川湊人)
 雑誌「ミステリーズ!」に掲載された短編を集めた短編集。ホラー寄り。
 なんというか、何がしたいのか分からない短編ばかりだなあ。将来、朱川傑作選が編まれるとしても一編もここからは入りそうにないぞ。
 フリークス的な素材がわりと扱われているんだけど、描かれる人物が感情的に一本線を引いていて、熱が感じられない。淡々と狂気を書くのはそりゃーありだが、山も谷もなく短編にあって欲しい切れ味も鈍いから、だらだらした感じしかしない。

 『世紀末大バザール 六月の雪』(日向旦)
 第15回鮎川哲也賞佳作。なにやら問題作だそうで。
 ミステリフロンティアならまだしも、これを鮎川哲也賞の名をつけて出すのはちょっとすごいなあ。けっこう冒険。
 それでも、あえて出すってことは人に読まれてほしい物語だと選考委員も思ったんだろうし、私もそう思う。
 2、3時間の愉快な読書と、おなかの中に残る熱くて苦いかたまり。荒くてもルールを無視していても、この物語には力がある。