『夜の声』(W・H・ホジスン/井辻 朱美訳)読了。
夜の海はこわい。
いちど、夜明けの海を撮りたいという友人に付き合って、砂浜に座り込んで朝を待ったことがある。
月の光はなかった。ひたすら暗く、波の音だけがたえない。人ひとりの存在など簡単に飲み込むだろう、力ある波の音が。
そしてその音を聞きながら、海にいきづく生命を感じていた。ただこわかった。
この短編集は船乗りが語り継ぐ怪談なのか。航海中に出会う奇怪な生物の話が多い。
表題作の「夜の声」は佳品で、極限状況に出会った人間の葛藤と、夜の海にひびくボートを漕ぐ音、そして流れてくる声といった情景でみせる哀切がたまらない。
一連のサルガッソーものは、似たような話が多くてマンネリに感じてしまうものの、船の墓場という魅力的な舞台と、そこで出会う廃船の気味悪さがなかなか。
ところで、黒猫荘の花井さんのところで、マタンゴの存在を知ったのだが、どうやら原作がこの「夜の声」らしい。
なんだかあらすじを見るとちょっと(というかかなり)原作とは雰囲気が違っていそうだけど、原案:星 新一/福島正実というのがキニナルので、機会があったら見てみようかと思う。
