ディファレンス・エンジン

読書

『ディファレンス・エンジン』を読んだ。

舞台は19世紀のイギリス。
もしバベッジが蒸気計算機を完成させていたらという改変過去世界の物語。

バイロンが首相になっていたり、実際の歴史との差異がいろいろ楽しめるけれど、実質的には機械の女王が託した究極のプログラムを巡る、ちょっとしたスパイものの様相で物語は進行する。

最初に物語にはっきり引き込まれたのは、マロリーが新型ガーニー(蒸気自動車)の競争に金を賭けることを頼まれて、最初は気が進まない様子だったのに不意に気が変わり、ほとんど全財産を賭けてしまうところ。
さりげなく描かれているけれど、そういう「人の気を変える」に足りる雰囲気の描写がうまくて、新しい機械が、新しい時代が生まれるのに立ち会うのだという高揚を強く感じた。

産業革命と同時に近未来に起こりうる情報革命が起こっているという想定の架空の過去世界であることで、展開自体はベタな冒険モノのようでも、読んでいてそこかしこに新しさを感じる。

カードに管理され、環境は汚染し、暴動が起きるロンドンはディストピアでもあるが、蒸気の機械が動く世界の描写は魅力的でもあるし、個人的に好きな場面なのだが、マロリー家の兄弟が揃って、「神様は阿呆の面倒をみてくださる」といって悪党との対決を選ぶ場面。
この軽やかな文章がなんといっても好きだ。