ジョン・クロウリーの『エンジン・サマー』を読んだ。
少年の語る物語は遠い遠い未来のこと。
今現在からつらなるであろう機械文明は嵐によって崩壊し、断絶し、忘れ去られている。
そして生き延びた人類によって築かれた独特な文化、小さなコミュニティ、そこで暮らすささやかな暮らし、少女との出会い……少年は語っていく。
読んでいて思うのは、なんて味わい深い文章、表現なのだろうということ。
たとえば登場人物のひとり、<まばたき>はこんなことを言う。
「それはたとえば、若いころのさびしさを思い出してひとりほほえみ、それがみんな過去の話であることに感謝するようなものだ」
思わず手をとめて、ふと考え込んでしまう。
私にもいつかそんなふうに思える瞬間がくるんだろうか。
きっとこれを読む年代ごとに、思わず目が留まってしまう一文があるだろう。
もっと若い、たとえば語り手と同世代の10代の頃にこれを読んでいたらどういう感想をもっただろう。
そしてもっと年を取ってから読んだら……?
エンジン・サマーは舞台となる遠い遠い未来でいう、小春日和のことだそうだ。
長く続く冬の中の、暖かな1日。それは偽物の夏。偽物なのだ。
けれど、少年の誠実で切実な語りは本物になる。
久しぶりに、読書していて胸がしめつけられるような切なさを味わった。
読後の正直な気持ちをいうと……このまま布団でもかぶって泣きたいくらいだよ。
