この頃PCをつけると暑さが増すので、久しぶりにポメラを出してきたら、『雪男たちの国』(ノーマン・ロック)の書きかけの感想というか紹介文もどきがあったので、どこかにいってしまわないように書いておこうと思う。
南極探検。
今では、旅行ツアーすらある南極だけど、最初のそれには想像を絶する困難があったはずだ。
この本を読んでみて、これが一体どのような物語なのかを自分の言葉で述べ直そうとすると、まず主人公がいったい何者なのか、というところからしてつまずいてしまう。
冒頭を読むと、英雄となったスコットの銅像を建てるために南極に行った建築家の日記という体裁になっている。
しかし、日記の中で彼は南極でスコットや隊員たちと過ごしている。
スコットをはじめとする彼らは既に死んでいるはずなのにだ。
極地における肉体的な限界、英雄スコットですら死においやられた過酷な土地における精神的な限界。
地理上の極点と精神上の極点。
そして夢のような生と、否定しようのない死の現実。
世界は限りなく死や狂気の顔をした幻想に近づき、何重にも緊張を強いる。
柴田元幸がこの作品を翻訳するきっかけとなった出来事をとある雑誌のインタビューで読んだのだが、そこまで含めて奇跡的な一冊だ。
