ピーター・キャメロン『最終目的地』
ウルグアイが舞台で英国古典小説の味わいという説明に興味を惹かれて読んだ。
自殺した作家の妻、愛人とその娘、作家の兄とその恋人の青年が、作家が死んだ後もばらばらにならずに見かけの関係の複雑さとはうらはらに、まったりと暮らしている小さなコミュニティ。
そこに死んだ作家の伝記を書きたいという青年が飛び込んでいったことから、少しずつ変化が訪れる。
あまり起伏のない淡々とした物語で、登場人物がはっきりと喜怒哀楽をあらわにすることは少ないけれど、感情の描写がとても繊細。
軽くもう一度最初から拾い読みすると、この台詞が誰かの気持ちを少し動かしたんだな、というところが分かるときもある。
色々な経験を経てから読んだらまた新たな発見があるだろうな。
充分成熟した大人の小説というか。
特に魅力的だったのは自らの老いを知り、恋人を自由にしようとする作家の兄で、印象に残った台詞をいくつかメモ。
歳をとっても美しくて魅力的なのは、いささか哀れだと わしは思うのだよ。 少なくともわしにとっては、能力の無駄遣いであるように、 ごく控えめに言えば、能力のまちがった使いかたであるように 思われる。
そりゃあ、さびしいさ。だが、このほうがいいんだ。 よく、そう言うだろう。このほうがいいとな。 要するに、耐えられないが、耐えてみせるということだ。
死んだ作家が書いていたのはディアスポラ文学らしい。
登場人物はみんな、故郷を遠く離れてウルグアイに行き着いた人たち。この小説もまたディアスポラ文学との関わりで語られるべきなのかもしれないが、私にはその知識がない。
満ち足りた読後感。

