Self-Reference ENGINE 【感想】

読書

 円城塔の連作短編集です。
 最初っから理屈っぽい文章なので、プロローグでこれは苦労しそうだなーという暗い予想がよぎったのですが、本編に入れば、大真面目に法螺を吹くようなものが多く、ユーモアを感じる部分を拾うだけでもかなり楽しめました。

 一編ごとの壁を越えて、後になってあれは伏線だったのか、とか、最後まで読んでやっとプロローグがもうちょっと理解できたとか。

 この連作短編の舞台では、どうやら「イベント」と呼ばれる、世界のあり方を変えてしまう大きな事件があったらしい。

 プロローグによると、それは「束になって歩いていた時間たちはある日、そんなことにはもううんざりだとばかり、てんで勝手な方向へ伸び始めた。」らしい。
 
 そんな世界って、どんななんでしょう。

 SFの素養がないなりに、理解できる断片を積み上げて、そのイベント後の世界では、どんな風に作物が実るんだろうとか、どんな風な経済生活が行われていて、どんな特色を持つ社会ができあがっていくんだろうとか、ついつい妄想を始めようとしてしまうのですが、なんというか、想像外。
 全体像を描くのが困難なんですね。
 けれど、世界の一部分で起こった出来事、一編ごとに描かれている思考の流れとか起こった事はなんとか分かる。

 それって、世界を認識するうえで、自分の手の届く範囲、目に見えるごく狭い部分だけが理解できる(したつもりになれる)ってことで、理解できる範囲だけがリアルってことで、だからこの本の読み方はそれでいいのかな、なんて、柄にもなく考えたりして。

 ややこしいことはおいといても、ほとんどの短編は好みでしたよ。

 特に好きなのは、箱を引っくり返す話と、江戸の話。あとSacra、Traveling。

 色々とややこしくなりながらも、最後はよっしゃとグーを作って立ち上がる、突き抜けた爽快さがあります。