七夕

読書

 七夕に特に思いいれはないが、阿倍晴明神社に行ってみた。
 本殿はすっかり七夕飾りに覆われていた。祭礼自体は夕方からだが、いつ雨が降り始めるか分からなかったのでお昼過ぎにお参りだけしてきた。
 七夕祭りは手芸の上達を祈る行事らしいのだが、ここでは阿倍晴明にちなんで手芸と文芸の上達をお祈りするらしい。
 というわけで、まわりの書く人のことを祈ってきた。5円で祈り過ぎたかもしれない。

 週末、色々と予定があるのでそのための買い物をすませる隙に、気がついたら5軒の本屋に寄っていた。

 財布の中身を整理していたら、図書券と図書カードを4000円分発見したので、ずっと迷っていたある本を買おうと思っていたのだが、店頭からは消えてしまっていた。残念。
 『黒い玉』(トーマス・オーウェン/創元推理文庫)だけ購入。ベルギーの幻想派作家らしい。帯の「「黒い玉」を読まずして怖いというなかれ」という煽り文句で買ってしまった。

 『妖怪博士ジョン・サイレンス』(アルジャノン・ブラックウッド)読了。

 以前、アーサー・マッケンの『怪奇クラブ』を読み、陶酔して余韻にひたりながら平井呈一の解説を読んでいたら、ラヴクラフトが心服する4人の怪奇作家としてマッケン、ブラックウッド、ロード・ダンセイニ、M・R・ジェイムズの名前があがっていたのだな。それを覚えていて、いつか読みたいと思っていた作家なのです。

 凡庸な(普通の)人が体験した異常な体験を解き明かす心霊博士ジョン・サイレンスの物語が6編入っています。

 どれも印象的だけど、怪異の聞き語りだったり、ジョン・サイレンス本人が怪異と対決したり、ホームズ&ワトソンよろしくワトソン役の主人公と一緒に出かけたり、名前も明かされない端役(ただし、印象的な)として出てきたりと、いろいろ展開は工夫されていて、マンネリを感じることなく、新鮮に読めます。
 そして、鮮やかに想像力を喚起してまざまざと目の前に情景が浮かぶ、そんな怪異たち。

 難をつけるとすると、ちょっと訳が直訳っぽくてたまに不自然さを感じることがあるけれど(そもそもタイトルの妖怪博士ってのがなんだか違和感)、それを越えて読ませるものがある。

 「いにしえの魔術」・・・・・・途中下車して不思議な町に迷い込んだ男の語り。説明的な部分は蛇足に感じるが、常識的な人物を取り込んでいく場の魅力は読者も引き込む。
 「霊魂の侵略者」・・・・・・空き家の冒険とでも呼びたい。ジョン・サイレンスが犬と猫を伴って怪異と直接対決する。動物たちの描写がいきいきとして思わず応援してしまう。
 「炎魔」・・・・・・依頼人に呼ばれ、助手を伴って旅に出る冒頭はまるでホームズ物のよう。依頼人で一緒に怪異に立ち向かうことになる元軍人の姿が印象的。
 「邪悪なる祈り」・・・・・・これの元となるような怪談はどこにでもあるんだな。ドイツの森の不気味さと邪悪な意思に囲まれる怖さがよく出ている。
 「犬のキャンプ」・・・・・・動物が生息しない孤島でキャンプ中に現れる謎の猛獣。ここで初めて人間対怪異というだけでなく、生きている人間たちの間で感情が行き違うさまが描かれ、答えのないラストに余韻が残る。
 「四次元空間の囚」・・・・・・四次元と行き来してしまう男の話。いきなりSFちっく。