ディケンズ短篇集(岩波文庫)【感想】

読書

 収録作は一応発表年代順に並べられていますが、前半はディケンズの長編から抜粋した挿話、後半は雑誌に発表された短篇ということです。
 抜粋した挿話はやはり少し展開が適当だったりバランスが悪かったりと、長編からこうして抜き出すことに意味があるのかどうか、と思ってしまいますが、そうした挿話の中にも一定の量の皮肉や笑いどころを仕込まずにいられないディケンズのサービス精神が読み取れます。

 収録作は、訳者後書きにあるとおり、ユーモア、異常心理の描写、サスペンス・ホラー的要素が読みどころで、特に色々なアンソロジーにもおさめられているという怪談の「信号手」、「エラリー・クイーンズ・ミステリー・マガジン」で紹介されたという、きわめてミステリ的な一編、「追いつめられて」は、ネタとしてはもう定番といった感もありますが、もはや時代劇みたいなもので、次に誰が何と言うか、どうなるか分かっていても、面白い。

 異常心理を描いたものも、自分は狂人だという男が人を殺すまでを描いた「狂人の手記」は、盛り上がる緊張感といい、読もうと思えば一種のせつなさがある部分といい、けっこうなサスペンスでした。

 全体的に、裏を読もうと思えばいくらでも深読みできるので、まだまだ読み込めていない気がします。
 要再読ということで。