ピーター・ディキンスン『キングとジョーカー』を読みました。
この作品は実際と異なる系譜をたどった英国王室が舞台です。
現実では、エドワード七世(ヴィクトリア女王の息子)の長男のビクターは亡くなって、次男のジョージ五世が兄の婚約者を娶って跡を継いで、今のエリザベス二世に至っているのですが、そのビクターが無事に生きのびて王位を継いでいたら・・・・・・という発想の元に、現在に至るビクター二世までの王室の系譜を作り上げています。
というわけで、王室の家系図とか知らない名前がいっぱい出てきますが、作者の想像の産物ですので、実際の英国の歴史を知らなくても、読むのに差し支えはありません。(実在の人物を暗示したり、風刺したりしている場合、ちょっとそのへんは手に負えないので読み取れてないと思いますけど)
それとは関係ないですが、大きな役割を持ったミス・ダードンは、アガサ・クリスティとほぼ同世代ですね。そう思ったら、(私は)ちょっと時代を把握しやすくなりました。
で、それを前提として。
ロイヤルファミリーの朝食中、王が食べるハムが、がまがえるとすりかえられていたことを発端に、「ジョーカー」のいたずらが始まり、やがて殺人にまで発展するという事件に、13歳の王女ルイーズの成長と、3代にわたる王室の赤ちゃん達の面倒を見てきた偉大なる乳母、ミス・ダードンの回想が差し挟まれている。
読み終えた最初の感想は、なんてリアリティのあるファンタジーだろう、ということ。系譜のそれっぽさ、ロイヤルファミリーの生活、年若い王女の葛藤と、細部にわたって行き届いていて、それでいて物語性を失っていない。
やってみようと思えば色んな側面からテーマを切り取ることが可能で、好きな方面に深く潜れる。
描写は微細だけども、書かれずとも豊かに想像力を喚起させてくれるところもあるし、ほんと至れり尽くせり。
ジョーカーがどういう心境でジョークを繰り返したかと想像したり、何度も危機に直面して、実際の身の危険ばかりでなく、アイデンティティの危機にもあった王女を救う「母」の姿なんかはもー。こういうのに弱いです。
