1、2月に読んだ本

読書

1、2月に読んだ本は3冊でした。

家族が正月にちょうど箱根駅伝の時期だし読みなよと貸してくれた三浦しをんの『風が強く吹いている』。
学生寮に住む大学生たちが、陸上ぜんぜんやってない仲間を巻き込みつつ箱根駅伝の出場を目指す話。
寮に住んでいて首謀者のハイジさんに巻き込まれていく男の子らがみんな個性豊かで掛け合いが面白いし、走ることに人一倍こだわりがありつつも高校時代にあれこれあったカケルが人と関わり合うことで成長していくのがとても良くて、ほとんど一気読みしてしまった。

男の子たちが寮とか安アパートで共同生活しているのがね…好きなんよ…それにハイジさんとカケルの関係が最初から最後まであまりにツボで、なんでこの作者は私の性癖を知り尽くしてるのかと空恐ろしくなるほどだった。

駅伝ということで協力し合うことも重要だし、それでいて走ることに深く真摯に向き合っていく孤独さも描写されているのが良かった。

次に読んだのは『芥川竜之介紀行文集』。
芥川ほどの小説家はどんな紀行文を書いてるのか、旅をしたときにどんなところを見ているんだろうか、とそういう興味で読んでみた。
半分以上は中国旅行の話だが、国内旅行記では「軍艦金剛航海記」の、海軍機関学校の嘱託教官だった時の伝手でか「金剛」に乗ったときの軍艦の中の人々の描写が面白かった。

どういう連載だったのか、いきなり視点が変わったり、知人に宛てた手紙の文章だったり、誰かと誰かの問答風だったり、今名古屋にいて熱出してる菊池寛の看病をしないといけないから紀行文が手につかないと言ったり、なんだか自由だなーという印象。

当時は今に比べると筆者も読者も中国の物語や漢詩の素養があった時代だと思うが、物語や詩の中に思い描いた中国と現実の中国とのギャップを常に意識した旅だったようだ。
それから芥川の興味は常に「人」にあったこと。
そういえば旅行中に竹内栖鳳一族としばらく同行したようで、息子の方とはけっこう話したように書いてあったけれど、栖鳳にはほとんど言及はなかった。
中国の風景を見るために旅する竹内栖鳳の目に28歳年下の芥川はどう見えていたのかなーなんてことを考えた。

匆匆たる、縹渺たる、蕭蕭たると、今はあまり見かけることのない形容詞が出てくる、その字面にうっとりした。

陳舜臣のミステリ短編集、『方壺園』。
1962年の『方壺園』の6編と、1968年の『紅蓮亭の狂女』から3編が収録されている。
どの短編も密室や不可能犯罪的な要素がきっちりあるけれど、読んでいるうちにある一人の人物に焦点が当たっていく、これはこの人のための、この瞬間のための物語だったのか、と腑に落ちていくのが心地よかった。
どっちかというと歴史ものの面白さの方に惹かれる。
ミステリ的には表題作の「方壺園」、印象に残ったのは「九雷渓」、「スマトラに沈む」。
陳舜臣の小説ってそうたくさん読んだわけではないけど、飄々として器が大きいというかおおらかというのか、そういう人物が出てくるのが好き。
高校生のときに『小説十八史略』を読みかけて挫折したんだけど、そろそろ読んでみようかなーと思う。

狙ったわけではないんだけど、芥川龍之介の紀行文集で中国の芝居の様子や各地の風景を読んだ直後にこれを読んで、少し世界観が繋がっているような短編があり、短編中で西湖を旅する佐藤春夫の元に芥川自殺の報が入る場面はなにかメタ的な感慨があった。