醍醐寺のすべて展

大暑の日に奈良に行ってきました。

奈良国立博物館の「国宝 醍醐寺のすべて」展が目当て。
平成25年に醍醐寺の文書群が国宝に指定された記念の特別展だそうです。
紙と墨ってすごいんだなーっていうのは、適切に保存管理してあれば平安時代とかに書かれた文書が普通に読める訳ですよ。
それでもって、国家や権力者のために修法を行ってきた醍醐寺での密教研究や記録の成果がこうしてきっちり残されたおかげで、たとえばですけど京都の神泉苑で雨乞いの儀式をした時に、どういう風に儀式の荘厳をして、お坊さんを配置して、どういう儀式を行ったっていう詳細がすっかり分かる訳ですよ。改めて凄い。

今回の特別展はそうした文書類だけじゃなくて、上醍醐開山堂本尊の理源大師坐像、薬師堂の御本尊、五重塔の初重壁画、五大堂の五大明王像、三宝院御本尊の快慶の弥勒菩薩坐像などなど、こんなにお出ましになっちゃって大丈夫なのかと思ってしまうくらいなのですよ。すごい見応えでした。

印象に残ったとこをちょっとずつ述べると、重文の如意輪観音坐像は、紅を差してるのかとはっとするようなお顔でした。
五大明王像は、江戸時代のものに比べると唯一平安時代の大威徳明王像がやっぱり異様で、五大明王が定型化した後のいわばコピーとオリジナルの違い…みたいな。
帝釈天騎象像や閻魔天騎牛像もよかったです。やっぱ平安密教の像は面白い。

快慶作という不動明王坐像は、体部は平凡に感じるけど、真っ正面から見ると捻った首の角度が今まで見たことない不動明王の印象を生んで不思議な感じでした。
仏像館の方に、同作者じゃないかって書いてる不動明王坐像があったので、比べてみると、確かに首の角度が似てるような?
修法に使われる本尊図像は見たことのないような密教の図像が色々見られて迫力がすごい。これお堂の中で護摩焚いてるとこで見たりしたら心臓止まるかもなー。
普賢延命菩薩像は、高野山霊宝館で見たのに比べるとしゅっとしててやっぱ都に近いからか洗練されてる感じ。
白描図像類の中にあらゆる妙見菩薩の図像集があって、これ全部見たい…ってなりました。
そして、色々書いてるけどとにかく最も印象が強かったのは、三宝院御本尊の快慶の弥勒菩薩坐像。
これがもう、どこから見ても美しい。
お顔も、衣服の襞の感じもですが、宝冠から袖まで長く垂らされた飾りも美しく像を彩って、ほんと…言葉通りの、完璧と言いたいです。
この日見た数々の文化財の印象がすべて上書きされてしまうくらいに。
さすがにこの像の前にはいつも人だかりができてました。
後は秀吉の醍醐の花見の時に詠まれた歌が書かれた短冊があって、金粉やらなんやらで装飾された短冊といい、美しい能書といい、豪華の一言でした。さすが安土桃山時代だなー。
俵屋宗達の舞楽図はとても可愛かったです。

夏の国立博物館の講座に申し込んだので、それに参加して後期展示をもう1回見てこようと思います。
あと現地にまだ行ったことないので、この特別展が終わって寺宝が戻ったら、1回行ってみないとなー。