龍谷・承天閣・天神さん

承天閣美術館 美術館・博物館

京都でいくつか見たい展覧会があったので出かけてきた。
JRで京都駅に行き、駅前のベローチェで腹ごしらえしてから歩いて龍谷ミュージアムへ。
ここでは常設の特集展示で「仏教美術のいきものがたり」をやっていた。
常設では仏教とは何か、そのことの起こりから釈尊の教えとその継承、伝播。ガンダーラや中国、タイ、ミャンマー、チベットなど様々な国の彫刻、仏像を見ることができる。
私は仏像にはまったといいつつ日頃は日本の仏像しか見ていないので他の国の仏像の知識が薄いなーと自覚はしていて、そのへんは龍谷さんの展示で知識を得ていこうという気持ちがあるので、行く機会があるとまじめに見るようにしている。
特集展示は「仏教説話に登場するいきもの」、「ほとけや神に寄り添ういきもの」と分けて様々な生き物がいた。

涅槃図の動物ってそういえば決まりはないんだろうか、あまり意識して何がいるとは見てなかったけれど、けっこう色々な動物を見た気がする。架空の動物や昆虫が混ざってたり、つがいでいるものがあったり。それとも出典がそれぞれ違う経典にあったりするんだろうか。
どこかで見たかたつむりと、ひっくり返ってる白象がなんかかわいいんだよな…とか思いつつ。
あと1308年の明兆の釈迦三尊十六羅漢像があった。
ここはいつもちょっと珍しいような曼荼羅を展示しているけれど、十二星座が書かれてる北斗曼荼羅があって、どこ由来なんだろうなあ。ていうか干支でなく十二星座?と確認してしまった。
それから法隆寺の鳳凰や、伝道院のあの路面にあった伊東忠太の石造物が展示されていた。

次の目的地は承天閣美術館。地下鉄に乗り、鞍馬口駅まで北上する。
相国寺をめざして歩いていると御霊神社があったので、これは素通りじゃいけないだろうと立ち寄ってお参りした。

御霊神社

舞殿に嵯峨御流の生花があった。

神社で見つけた生け花

相国寺はちょうどこの日から春の特別拝観が始まったそうで、入っていく人を何人も見かけたけれど、私はまっすぐ承天閣美術館の方へ。
ここでは「温故礼賛」展という特別展をやっていた。副題は「百花繚乱相国寺文化圏」。
右手に無学祖元、前に文正筆の二羽の鶴という空間、こっちには後陽成天皇、あっちには雪舟と、もう物凄いとしか言いようのない感じ。
東林筆の地蔵菩薩も線が薄れていたがとても美しく見え、単眼鏡を忘れたことをたっぷり後悔した。
まあ本当によく惜しみなく名品を並べたなあという感じ。1室を見ただけでかなり腹一杯になっていた。
承天閣美術館に行くのは5年ぶりで、その間に多少は目が肥えたのか、それとも昨年の泉屋博古館フルーツ&ベジタブルズ展で葡萄図を色々と見比べたからか、若冲の葡萄小禽図の良さが、一之間の床貼付そのままで見る意味が以前よりも感じられたと思う。
しっかし最も貴い人を迎えるという一之間の、しかも若冲の葡萄に彩られた床の間にいったい何を置いたんだろうな? と今は空であるそこを眺めて考えた。

2室の展示も若冲、応挙、池大雅、牧谿とどんどん来る。
その中で柴田是真が気になった。漆工家だからか濃淡のない塗りが新鮮に感じるのかな。
小堀遠州の巻物はあれほどの人の絵がわりと普通だなと思うとちょっとほほえましく思ってしまった。
茶道具の中では、光悦の赤楽茶碗がとても好きだった。作為があるものはあまり…と思うことがあるけれど、光悦のは好きだなあ。

満喫して外に出た。

それから歩いて近くにあるはずの同志社大学の入り口を探す。
大学の敷地って部外者が入っていいのかどうか迷うので、守衛さんにギャラリーが見たいんですがと声をかけたら親切に案内してくれた。
入ってみたら学生には見えない散歩っぽい人や観光っぽい人も案外と普通に歩いていた。
ハリス理科学館同志社ギャラリーで「考古学は地域に勇気を与える 森浩一の考古学」展をやっていたので行ってみた。

ハリス理化学館同志社ギャラリー

地域学、なんとなく聞き覚えはある気がする。
吉野ヶ里や三内丸山の熱狂はなんとなく記憶にあるので、司馬遼太郎が森浩一にあてたハガキを見て、そういったことを思い出す。
考古学ブーム的なもの、その後どうなったのか検証する時期なのかな~いやもうしてる人がいて知らないだけかもしれんけど。
愛知県春日井市の味美二子山古墳の出土品があり、須恵器を作るのにろくろを使っていたことを知る。その頃にもうろくろってあったのか。考えてみれば須恵器ってもうかなり整っているのがあるもんな。

ここに来たのは敷地内の建物を見てみたかったというのがあって、せっかくなので少しうろうろしてみた。

同志社大学の建物

最後の目的地に行く前に休憩と栄養補給を兼ねて、大学から烏丸通を挟んで向かい側にある喫茶店に入ってアップルパイを摂取。

アップルパイ

ここまででけっこう時間がかかってしまったので、最後の目的地をまた別の日にするかどうか迷ったが、会期の終了が近かったのでやっぱり見ておこうと、地下鉄で三条に移動し、京都文化博物館に向かった。

「北野天満宮 信仰と名宝」展。
天神さん信仰、菅原道真の人となりを始めとして、北野の天神さんがどう創建されたか、どのような信仰の場となっていたのか具体的に、それから各時代ごとに時の権力者との関係や後ろ盾を得てどのような変遷を経たかを文献多めで明らかにしている。
北野天満宮の歴史まるわかり決定版みたいな感じ。
北野天神縁起絵巻は国宝の承久本、ちょうど燃え盛る業火といった場面でしかも上下幅があり迫力があった。パネルの説明が懇切丁寧で、どんな場面があるのかあらかじめ把握できた展示も良かった。
弘安本、光信本、光起本と堪能。

かつて境内にあったという多宝塔の火天、閻魔天図扉絵は、へー北野の天神さんに多宝塔!へー十二天で荘厳!と驚かされた。
親縁寺にその多宝塔の御本尊と台座があるらしい。いつか行く機会があればいいな。
それから色々な天神像、これは気持ちもうちょっとあってもよかったかな。そして芸能、祭礼の場としての天神さん。境内で行われた大茶湯、祭礼図や遊楽図はとても華やか。
行く前に危惧したとおりだんだん閉館時刻が近づいてきて、一通り見るために終盤は駆け足になってしまい、最後に海北友松の雲龍図を目に焼き付けて出た。

よれよれになって帰宅。