櫟野寺大開帳と「百の手すさび」展

櫟野寺の門 お出かけ

滋賀県甲賀市の櫟野寺の秘仏御本尊の十一面観音坐像は、近年は春と秋にも特別公開されているようですが、本来は33年に一度の御開帳のときだけ開扉されてお会いできる御本尊だったそうです。
それで今年はその33年に一度の御開帳の年にあたるということで、本堂と収蔵庫の改修を終えて大開帳が行われると聞いて、この機会にお参りしてみようとレンタカーを借りて行ってきました。
今までにいくつかの展覧会で櫟野寺の仏像を見てお寺の名前を印象的に覚えていたというのも行ってみたかった理由の一つでした。

お寺の駐車場は満車のようで、近くの民家の敷地に誘導してもらい車を停めました。

櫟野寺

境内には回向柱が立っていたので触れておきました。天気も良くて最高の御開帳日和。
収蔵庫には東京と大阪の博物館に寄託されていて里帰りした2体を含む22体の仏像が安置されていました。

御本尊の十一面観音は、なんといっても大きい。坐像だけで3メートル、光背まで入れたら5メートル以上あるそう。しかも、一木造り。まずはこの大きさの仏像が彫り出されたその大樹を想像して驚かされます。
後でトーハクブログを読んだら、本体の重さは740kgあったそう。重量感がはんぱない。
収蔵庫にある甲賀三大大仏という薬師如来坐像も丈六仏ですが、御本尊を見たあとだとなんだかかわいく見えてきてしまう。
お顔はふっくらして目が釣り上がり気味で、鼻筋はくっきり通って唇が厚い、全体としては端正な印象を受けるお顔。
トーハクで行われた櫟野寺展のキャプションが置かれていて、御本尊の顔立ちを受け継いでいる甲賀様式の説明もわかりやすかったです。
10世紀の御本尊を中心とする様式のグループと、12世紀の薬師如来を中心とする様式のグループがあることも。
他に吉祥天や毘沙門天など印象的な像がいろいろとありましたが、特に好きだなと思ったのはひとつだけ新しい南北朝時代の弥勒如来坐像。
後日、2011年の神仏います近江の瀬田会場に行ったときのブログを見たら、やっぱりこの像の名前を挙げていて、7年経っても同じ仏像に惹かれるんだなと思いました。
櫟野寺の仏像は木目が美しく見えたり、鑿あとがはっきり残されている鉈彫りだったり、木をそのまま生かした像が多いという印象。

本堂を出て、奥の書院の方へ歩いていくと、紅葉がきれいに色づいていました。

櫟野寺庭園の紅葉した木

お寺の横の広場に少し屋台が出ていたので、うどんを食べておだんごとさんま寿司を買ってとお祭り気分を満喫しました。
大開帳の期間中は駅から臨時バスも出ていたけれど、色づいた山を見ながら走る秋のドライブは気持ちよく、レンタカーを借りてよかったです。

周辺にもお寺や神社など行ってみたい場所はありましたが、歴史民俗資料館なんかは大開帳の期間はしまっていると聞いていたので、甲賀三大大仏とかこのへんは改めて別の機会にまわろうと思い、次の目的地はMIHO MUSEUM。
櫟野寺とは同じ甲賀市内にあるんだけど、カーナビで設定したら30km以上あった。20分も自転車を漕げば東西両隣の市に行ける狭い大阪に住んでいるから、広いな~としみじみ思いました。

50分ほど車を走らせてMIHO MUSEUMに近づくと、上の方の駐車場が満車ということで、下の駐車場に案内され、シャトルバスに乗せてもらって美術館へ。
「百の手すさび」展最終日。

MIHO MUSEUM百の手すさび展

茶杓は茶人の刀という、と以前本で読んだことがあり、茶道具の中でも一種特別な興味を惹かれていました。

今回の展覧会は「近代の茶杓と数寄者往来」と副題がついている。
近代の数寄者というと何人か名前が浮かぶけれど、皆それぞれ自分の茶杓をつくり、名付け、贈ったり贈られたりしていたらしい。手すさびという言葉に、竹を削ってつくる気軽さが表れているようだった。そして、その気軽さと裏腹に、茶杓には作り手それぞれの美意識が強く現れている。
今回の展示で、茶杓の部分的な名称…櫂先、露、撓め、船底など、それから絵のように真・行・草の種類があること、茶人の名前を冠して型をいう場合があること(利休型、遠州型、宗旦型など)を知りました。
MIHOの展示は配布している展示物の一覧の用紙にそういう基本的なことも載せてくれているので、あとになってから読めるのがとてもありがたい。

著名な茶人のもの、鈍翁にはじまる近代の数寄者、女性、文化人の茶杓を見ていく。
こうして見ていくと、やはり茶杓そのものを見て比較するというよりは、それが誰のものかで自分の対象を見る熱意が変化するなと思った。知っている人のものの方が、あの人はこんな茶杓を作っていたのか~と熱心に見られる、という。当たり前のことかな。

茶の道具が一揃い揃ったある一室に入ったときに、うわあ凄いかっこいいセレクトだな~好き!!MIHOの展示凄いな~と思いつつ見ていたら、小林逸翁さんのある茶会を再現したものだった。
逸翁さんてこんな趣味だったのか、逸翁美術館てわりと近くにあるわりになんとなく行ったことなかったけど今度行こうと思った。
小林逸翁と住友春翠が開いた茶会の説明パネルがあって、そうそう、数寄者がどういう考えで道具をセレクトして茶会を開いて、誰が来て、何食べてっていう、そういうのを集めた展覧会とか、本がとてもとても読みたいんだと思った。
あと春翠さんの茶杓はほっそりしていて優美だったなあ。

近代の数寄者については、なんか潤沢な資産で名物を集めたコレクターとして見てしまって、彼らを文化の担い手、主体として受け入れられるかというと自分の中では微妙なところがあるんだけれど(それは自分が庶民のせいかもしれない)、MIHOの展示はやはり見てよかったなと思えるものでした。

道の駅に寄って野菜を買い込んで車を返却し、帰宅。