「五井金水とゆかりの画家たち」展と「絵金」展

玉手棠洲「四季図」 美術館・博物館

中之島の「大阪の日本画」展が終わってしまって、もう少し見たいなあという気持ちと、近頃いやに暑い日があって参るので、目に涼しいものが見たい……そんなときの!

五井金水とゆかりの画家たち展

くらしの今昔館でやっているのを思い出して行ってきました、大阪の四条派、最近は船場派と言ったりする「五井金水とゆかりの画家たち」展。
五井金水のご家族が所蔵されていた美術品を初公開とのこと。

五井金水は中川蘆月と久保田桃水に絵を学んでいて、須磨対水とは兄弟弟子にあたるそう。

五井金水の画房扁額と愛用の箪笥

画房の扁額と愛用の箪笥が出ていたけれど、これを見ると文人好みっぽいと感じる。
絵の具やたくさんの筆、落款印なども展示されていた。
写真撮影OKということで、好きな絵を撮らせてもらってきた。
「瀧図」

五井金水「瀧図」

この縦の流れと右下部分の余白がすーっとしていかにも目に快い感じ。

五井金水の他の画家の絵も豊富に展示されていた。
船場派といえばまずこのひと、五井金水の師匠の師匠、西山芳園は「白鷺図」

西山芳園「白鷺図」

深田直城「鮎図」。やっぱり好きだなあ。

深田直城「鮎図」

中には大きな屏風も展示されていた。

月岡雪鼎「定家詠十二ヶ月押絵貼屏風」

月岡雪鼎の「定家十二ヶ月押絵貼屏風」。季節の花鳥と王朝人物という画題だけれど、説明文のところに「雪鼎の春画は火伏せの護符とされ、高値を呼んだとされる」とか情報が出てきて、そっちもかなり気になるよ!という状態だった。
森一鳳の藻刈船が商売繁盛で商家で掛けられたというのは聞いたけれどあれは語呂合わせだし、火伏せの護符となるというとなんかしら由来がありそうだよなあ。それを持っていた家が焼けずに済んだとか?

ちなみにこの記事の最初の写真は玉手棠洲の「四季図」です。

手元の図録を確認すると、「サロン!雅と俗」展には久保田桃水が西山芳園の弟子として出ていて五井金水の名前はなく、「大阪の日本画」展には五井金水が西山芳園を臨模した川魚図が出ていて久保田桃水は出てなかったみたい。

ここの展示では桃水と金水の松と鯉の絵が並べて展示されていた。

久保田桃水「遊鯉図」
五井金水「松鯉」

全体的な印象は似ているかなあ。
この画面の全部は埋めない、余白おおめの感じがすっきり見えて、何度か見ているうちに船場派の絵って目に入ってくるのが快いと感じるようになってきた。
そして船場派は大阪のくらしに根ざした絵だから、くらしの今昔館で展示をやってくれるのはかなり合っている感じがした。

せっかく大阪市内に出たので、天六から谷町線で天王寺に行きあべのハルカスへ。

絵金展看板

ハルカス美術館「絵金」展。
絵金のことは本で読んで知っていて、いつか機会があったら高知の夏祭りの夜に見に行こうと思っていたら、先に大阪に来てくれた。

芝居絵が多く、登場人物やそこで起こっていることなど、一枚の絵に詰め込まれた情報量がかなり多い。
実際の家などではなく、芝居の舞台をそのまま描いたような? いくつかの場面が1枚におさまっているのかな、芝居は登場人物の名前が少しわかる程度の知識なので……登場人物めっちゃ死ぬ。
明るい照明の下で見ると、べったりとした塗りの役者に対して、背景の描き込みがけっこうこまかいなと感じた。このへんの線は美術館の展示室でないとよく見えないだろうな。

2室目に移動すると、祭りの夜を再現したような展示で、変化する照明の下で絵を見られた。この部屋だけ撮影可だったので少し撮らせてもらった。

神社の飾り付けと絵金

手長と足長の彫刻面白い。

手長の彫刻飾りと絵金
足長の彫刻飾りと絵金
提灯に照らされた絵金

かなり雰囲気はあったが、それでもやっぱりもっと暗いところで、夏の夜に蝋燭の火で浮かび上がる絵を見てみたいという気持ちにさせられる。
そういう空気感と一緒に体感したい絵だろうか。

石川五右衛門の一連の絵が、悪いやつなんだけど色気があって魅力的、そして処刑されて……という無常さがあってよかった。
あと、周辺の絵師ということで展示されていた河田小龍がけっこう好きだった。

しかし1日に見る絵としては、日常的な絵の船場派と年に1回の特別な日の絵金と極端な感じで、日常に帰っていくには見る順番を逆にしたほうがよかったかな?と思いつつ帰宅。