東京遠征

美術館・博物館

1月に2泊3日で関東に行っていました。丸1日と半分は展覧会めぐりをしてきたので、その記録です。
12月に使ったミュージアムぐるっとパスがぎりぎり期限内だったので使用。

2日めの朝は品川駅からスタート。駅前にずらっとビルが並んでいるところを歩いていくと、目的地のキヤノンSタワーを見つけました。
同時開催の次元大介の存在感が強い。気になるけれど、見てない実写版の写真展らしいので今回はスルー。
目当てはキヤノンギャラリー50周年企画展奇想民俗博物館「まつりと」です。

「まつりと」はキヤノンMJが立ち上げたプロジェクトで、日本の各地の伝統的な祭りが風化していく懸念から、映像技術やデジタル技術を活用して祭りの魅力を幅広い層に伝えていくというものです。
品川、銀座、大阪の3つのギャラリーで開催されるそうで、品川のテーマは「森羅万象に宿る神々」
展示は写真とともに、祭りに使われるモノも少し。

民俗には興味があるので本当に思うんですが、祭りは行われなくなると、すぐに記憶が風化してしまう。
藁の綯い方を知る人がいなくなってしまう。
一旦途絶えると、それを再現するのは大変な苦労があるわけです。

水の祭り

火の祭り。
これだけの機材を使って、祭りの記録がなされていくのは大変意義深いプロジェクトだと思います。民俗スキーとしてはありがたいし応援したい。
ていうか波も炎も、最近のカメラの描写ってすごいなーとつくづく思いました。

日本国内の「鹿」の祭りでもところが違えばこれだけちがうのです。

芳賀日出男さんの写真が見られるー文庫版で持っているんですが、大きなプリントで見られるならそりゃ見たい、くらいの気持ちで行きましたが、よかったです。
あと芳賀さんのお子さんも写真を撮っていらっしゃるのを初めて知りました。

大阪のキヤノンギャラリーでの展示も楽しみです。

ギャラリーから出て駅に戻る途中にチェーン店のカフェがあったのでパンとカフェラテで早めの昼食。
山手線で渋谷駅に移動し、松濤美術館へ歩いて行きました。

松濤美術館 「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容

瀧口修造・阿部展也・大辻清司・牛腸茂雄の4人の名前があげられています。
昨年末に京都の文博で「シュルレアリスムと日本」を見て日本でのシュルレアリスムの歴史をつかみ、伊丹で牛腸茂雄展を見て作家を掘り下げていたので、それらからちょっと続いているような……日本の写真分野におけるシュルレアリスムの展開の続きであり、また新しい視点で日本の前衛写真を捉え直すような鑑賞体験でした。

理想的な作品としてウジェーヌ・アジェが取り上げられていましたが、私もそもそもウジェーヌ・アジェが気になったところから写真を見始めたので、今回のテーマがしっくりくるのも当たり前だったかもしれない。

牛腸茂雄の研究所時代の作品がかなり好きな感じでした。めっちゃかっこいいと思う。
けれど人を撮る方に行ったんだなあ。

松濤美術館の展覧会はいつも心に深く残り、いつまでも思い出すときがありますが、今回もそうなりそうです。

渋谷駅に戻り、また山手線で新宿駅に移動。
文化服飾博物館の「魔除け」展。
ここはなんだか面白そうな展示をやっているなーと前から思っていて、魔除けとかまじないは好きだし、この機会に訪れてみました。

魔を追い払う、魔に入り込まれないようにする。
2つのフロアにさまざまな国の衣服が展示されていました。みんぱくとかの衣類・装飾品特化展示みたいな。
鏡を使ったり、特別な文様や色を使ったり、魔を追い払うためになにかの力を借りたりと、ジャンル分けして各地のものが展示されていて、どちらかというとアジアのものが多かったかな。キリスト教圏のものはあまりなかったと思います。

なんだろー、それぞれの衣服が持つ文脈から切り離してカテゴリで見るからか。
宗教的な要素が展示には含まれないから、魔除けの魔って何ってところが結局あやふやというか、その魔除けの裏付けが宗教なのか民間信仰なのかなんかしらの文化的な伝統なのかとかは展示にはあまり含まれていなかったので、ある程度の量が見られて楽しいは楽しいけれど、若干の物足りなさがありました。
もう一歩、なにかテーマがあったらより面白かったなあ。

新宿駅に戻り、また山手線に……山手線しばりにしたつもりじゃなかったんですが、なんとなく山手線の移動が多くなりました。
日暮里駅で降りて、芋坂の団子を食べに羽二重団子に寄りました。
漱石もなかとしょうゆの焼き団子の漱石セットを頼んだんだけど、あんこの団子も食べたい……という思いやまず、追加注文しました。

お昼が少なめだったので大丈夫だもん。おもちやわらか、あんこ甘めでおいしかったです。

満足して、書道博物館 呉昌碩の世界展。
少し見て思ったのは、兵庫県立美術館からの出展が多い……梅舒適コレクション……。
まあそもそも兵庫県美で見たから呉昌碩のことを知って、それで来たんだよね。
あとついでに清荒神さんとこの鉄斎美術館から鉄斎の方印がきていた。

そしてこのあと最後にトーハクに行く予定で、トーハクにかける時間はいくらあってもいいので、過去に見ている分はさらっと見て済ますことにしました。
書道博物館の説明は、書ってこういうところを見るのかという参考になります。
呉昌碩の癖の感じがよくわかりました。

書道博物館からJRの線路を渡り、そのまま歩いてトーハクに向かいました。

東京国立博物館特別展 建立900年中尊寺金色堂

中尊寺金色堂の堂内中央須弥壇に安置される11体がお出ましということでした。
阿弥陀三尊像に6体の地蔵菩薩様、それから二天像。

中尊寺には実は高校の修学旅行で行ったのですが、当時はお寺さんにも仏像にも興味がなく、ほとんど記憶に残っていません。
仏像に興味を持ってから土門拳の写真を見て、改めていつか中尊寺を訪れてみたいと思いつつ果たせずにいました。

せっかくの機会なので、すべてのお像を目に焼き付けるべくぐるぐるまわりつつ拝見してきました。
特別展開幕2日目の訪問となり、入館が遅めだったので並ぶことはなかったのですが、展示室はかなり熱心に見ている人が多く、人がいなくなった隙間を狙いつつ移動しては見て、という感じでした。

入り口の8KCG映像もすごい。堂内がこういう感じで荘厳されていて、というのがありありとわかります。
すごいけれど、土門拳の写真も、8KCGも、自分の目で今見たばかりの仏像の姿とはちょっと違うんだよな……とも思います。

いつか今日見た記憶を持って平泉を訪れる機会がきますように、と願いつつ、俗世の欲にまみれた私は残り時間で常設展を見るために急ぐのでした。

残り時間と体力から東洋館に行くのはあきらめて、本館をうろうろ。

長谷川等伯の国宝松林図屏風は、展示期間が延長されたためにかなり久しぶりにお目にかかりました。引力強い。このまま閉館時間までそこに座っていたい。

辰年特集で、推しの後陽成天皇の書発見。

そうこうしているうちに、閉館時間が…………ああー

ここ数回なんとなくトーハクでは消化不良で終わっちゃうんだよなー
もっとじっくり時間をとって落ち着いて見た方がいいんだろうか、とか思いつつ、この日は終了となりました。
夜間開館の日に合わせられればいいんですが。

最終日の午後、お昼を食べてから千葉駅へ。
初めての千葉市美術館で、サムライ、浮世絵師になる!鳥文斎栄之展

鳥文斎栄之は旗本出身の浮世絵師で、元々は将軍徳川家治の御小納戸役として絵具方という役目をつとめ、御用絵師の狩野栄川院典信に絵を学んだそうです。

昨年、香雪美術館と藤田美術館で鳥文斎栄之の肉筆画を見て、きれいだなと素直に思ったことから、ボストン美術館や大英博物館からの里帰り品が出るという今回の展覧会は気になっていました。

作品の印象はなんといっても上品な華やかさ、です。教養がある人向けの絵。
摺りも丁寧できれい。
あと小道具というか、モノの描写が丁寧なところが好きです。
それから展示のなかで、版元の都合が語られていたのもちょっとおもしろかったです。

撮影可だった作品。写り込みのためナナメからの写真だけど、橋桁の構図が面白かったです。

船の舳先のほうに立花?があったのですが、なんかおまんじゅうが並んでいるように見えて気になってしまいました。

鳥文斎栄之展だけでかなり見応えがあったのですが、もうひとつ企画展として「武士と絵画」をやっていました。
江戸時代の長い歴史のなかで、武士でありながら絵筆で身を立てることになった者、藩から脱して文人として生きた者、また絵の技芸によって召し出されて藩の絵師として活躍した者、そして幕末期に絵筆を持っていた侍が維新後にどう生きたのか……これまたけっこうな見応えでした。

大猷院殿(家光?)のまた問題作があるしー。
海北友松が見られたのがとても嬉しかったです。あと鍬形蕙斎がよかった。

十分時間をとって行ったつもりでしたが、時間が足らずコレクションがもう1フロアあったみたいですが見られずここまでとなりました。