青春18きっぷで倉敷・大原美術館へ

倉敷美観地区 美術館・博物館

冬期に実家への帰省ついでに上京しようと思って青春18きっぷを買ったものの、結局中止にしてしまい、中途半端に残った回数を消化するために正月休みに1人で出かけてきました。

そういえば20代の頃は青春18きっぷの「青春」という部分を口に出すのがどうしても気恥ずかしくて、JRの窓口でも「むにゃ…18きっぷを1枚…」という感じだったのが、特に何も思わず「青春18きっぷください」と言えるようになっていたのに気がついたときが、最も自分が大人になったなあと実感したときでした。
余談すぎる。

さて、18きっぷでどこに行こうかと検討して、今回は倉敷へ行くことにしました。
メインの目的は美観地区にある大原美術館です。
大阪から倉敷は順調にいけば鈍行でも片道3時間程度。日帰りならそれほど早く出発しなくてもよいので、梅田でモーニングをしっかり食べて出発。
この日は大阪駅で姫路行きに座れる程度に席に余裕がありました。
西行きの難所は相生からの船坂峠越えで、もう10年以上前の18きっぷシーズンに、あまりの混雑……朝の御堂筋線よりきつい……に心が折れて相生ー岡山を新幹線に乗り換えたことがありますが、今回はぎりぎり座れたので安心しました。

岡山駅で乗り換えて、順調にお昼頃に倉敷駅に到着。
雨が降り出しそうだったのでアーケードを通り、昼ごはんにちょうどよさそうな店を探しつつ美観地区に向かいました。
1人で出かけるときは何を食べるかにはこだわりはなくて、チェーン店で軽く済ませることが多いのですが、駅から離れていくとそういったお店は見当たらず。
この日の大原美術館の閉館時刻は15時で早めに閉まってしまうので、昼食は抜きたくないけれどあまり時間はかけたくない。
せっかくの遠出だからたまにはちょっと特別なランチでもいいんだけど、さっと食べられるお店がいいんだよなーと行列ができているお店を横目に迷いながら歩いていると、すぐ目の前を歩いていた人がすっと入ったお店が雰囲気のよさげなカフェで、それほど混んでいないようだったのでつられて入りました。

倉敷のカフェのカレー

ちょうど求めていた感じのカレーとコーヒーのランチをさっと済ませて、まっすぐ大原美術館に向かいます。

倉敷大原美術館の門

入り口が独特な感じ。石垣みたいな石積みに、むりやり入り口を開けて門をつけたような。
料金を支払い中に入ると、まず正面に児島虎次郎の「和服を着たベルギーの少女」があり、その色があまりにも鮮やかさに見えて少しびっくりしてしまいました。
薄曇りの冬の色を見ながら歩いてきたから、よけいに鮮やかに見えたのかもしれないです。
そして裏にまわると、ムンクのマドンナ。コントラストが強い。

とにかく今回は児島虎次郎が強く印象に残りました。
季節外れですけれど、「朝顔」。いつまでも見ていられそうでした。色に溺れるかと思った。

他に印象に残ったのはアンリ・ルソーの牛の絵、安井曾太郎の風景画。
それからモローの「雅歌」の背景の建物の感じが好きでした。

元々なぜ大原美術館に来ようと思ったかというと、私が20代前半のときにほとんど唯一見たことがある美術館だからです。
美術館に行くような素養を持たず、大原美術館に来たのも師匠に連れられてだったんですが、ここでユトリロの名前だけ覚えて帰って、それで姫路市立美術館でたまたまユトリロ展をやっていたので見て…という経緯でだんだん美術館に行くようになっていったので、私にとってはだいぶ原点に近い美術館です。(正確にいうと自分の原点は箱根の彫刻の森ですが)
ここに来れば、ここ数年でいろいろ見てきた自分の積み重ねがわかるんじゃないかという気持ちが少しありました。

実際に来てみると、ひとつひとつの作品に向き合って楽しむことができたと思います。
そういう自分なりの美術館の楽しみ方を覚えたとはいえる、ということかな。
それから知識を得たことで作品を見たときに受け取る情報量も増えたということが実感できたかも。

きっかけとなったユトリロの「パリ郊外」にも再会。

エル・グレコの「受胎告知」は壁に1枚だけの印象的で特別な展示。
姫路でバルセロナ展を見たので、エル・グレコが再評価されたくだりは知識として得ていたけれど、実際に見るとたしかに描かれた時代には異質だったかもなあ、と。
……けっこう姫路市立美術館で見たものの影響が大きいかもしれないと自覚した日でもありました。

本館のあと工芸・東洋館をざっと見て外に出ると、青空が出ていました。

倉敷大原美術館

大原孫三郎と児島虎次郎が作り上げた理想の場所。

帰るには早かったので、町並みを見て歩きました。

倉敷美観地区の町並み
倉敷美観地区の橋

観光客もそこそこいるけれど、混雑というほどでもなくほどよいにぎわいで、散策にはちょうどいい感じ。
以前倉敷に来たときに入って気に入った喫茶店に入ろうかと覗いてみましたが、けっこう席が埋まっているようだったので今回は諦めました。

倉敷美観地区の蔵

歴史的町並みが表通りだけでなく奥行きがあるので、白壁を見ながらぶらぶらと道を逸れていくのも楽しく、だんだん駅に戻ろうと思っていたのに、気がついたら鶴形山の駅の反対側の方に出てしまいました。

駅に戻って帰りは播州赤穂へ出て加古川で途中下車。
定食屋で夕食を食べて加古川線に乗り、谷川駅から福知山線に乗りと18きっぷを満喫して帰りました。