1~6月に読んだ本

読書

今年は毎月書きたいとか言ってた気がするなあ〜と思いつつ、今年1月〜6月に読んだ本メモです。
半年で読んだ本は16冊+図録でした。
1月は久しぶりにミステリを何冊か読んでいました。そこで冊数を稼いだ。
その後は市の図書館が閉まる前に、最近見た展覧会を補完してくれる本を借りてきて読んだり。

読んだ中で、印象に残った本について簡単に。

『本と鍵の季節』米澤穂信
図書委員の2人の男の子がちょっとした事件について推理をめぐらせる短編集。
最初は主人公がワトソン役で相方が探偵役なのかなと思っていたけれど、主人公も案外推理の切れ味がいいとこ見せてきて、探偵とワトソンとか、世慣れてる方とうぶな方とか、ステレオタイプに簡単にはめこめない感じ。
その拮抗している2人の関係性と、米澤穂信らしい会話の面白さがはまってとても良かった、好き。
ラストについてはもういくらでも語れるんだけど、ここでは控えておく。

『誰も死なないミステリーを君に』井上悠宇
人の死期がわかる、死線が見える女の子という設定を肝にして、タイトルどおりに人の死を防いでいくというミステリ。
理不尽なことのある世界で、誰にも感謝されなくても行動するんだという、うーん優しい世界。これもとても好みだった。

『アルバム ジャコメッティ』
ジャコメッティのモデルを務めた哲学者、矢内原伊作のエッセイと写真。
矢内原のなにがジャコメッティの琴線に触れたんだろう? 
初対面の時点では留学中の矢内原が頼んで会ってもらったという感じなのに、次にアトリエに招かれたときにはもうジャコメッティが自分の仕事や能力を一生懸命アピールして、矢内原にモデルになるようお願いしている。
矢内原の写真は本業ではないにしても、被写体の魅力もあるせいかすごく好きで、これは図書館で借りたんだけど手元に置きたい本になった。

『北村薫のうた合わせ百人一首』
北村薫の、うた合わせという趣向のある短歌アンソロジー。
2つの短歌をあわせることで浮かび上がる新たな情景、その相乗効果がとてもよかった。
これがたぶん小説だったら、北村さんに読み方を提示されたときにひれ伏してさすがそのとおりでございます、って言ってるけれど、短歌だと読み方に読み手の経験が占める割合が大きくて、ああ、北村さんと読み方が違っていてもいいんだな、抱く感想は自由でいいんだなというのも強く感じた。
『虚無への供物』の奈々村久生のモデルが歌人の尾崎左永子という話や、以前北村さんのエッセイを読んだときに、短歌をやめようとしている人に高瀬一誌が言ったという

違うよ。短歌をやめるなんて、そんな偉そうなことをいっちゃいけないよ。 短歌をやめるんじゃなくて、短歌に捨てられるんだ。 《短歌》というものの方が、あなたに見切りをつけて去って行くんだ

というのがすごく印象に残っていて、この本では高瀬のいったいどの歌が選ばれているのか、どんな書かれ方がされてるかとか…。

読んだ中で永井陽子と藤井常世の歌が気になったので、また読んでみようと思う。
あと釈迢空の

人も 馬も 道ゆきつかれ死にゝけり。旅寝かさなるほどのかそけさ

の次に、石田比呂志の

お庭先拝借させて下さいと旅の蝶々が息引き取りぬ

の景を置きたいな。

『どこに転がっていくの、林檎ちゃん』レオ・ペルッツ
捕虜だった時に侮辱されたロシアの将校に復讐するため、革命真っ最中のロシアに戻っていくオーストリアの青年の、仇を探して三千里話。
主人公がほんと青二才というか、侮辱されたっていうのもぜんぜん命を賭けてまでロシアに戻るような出来事じゃないのね。
その思い込みと無謀さ、ドン・キホーテを思わせる。

そういう復讐しか考えてない主人公が、仇を探すうちにいろんな陣営に転がって行って、主人公に関わった人はそれぞれの立場なりに立派に生きているのに、巻き込まれてあちこちで死んじゃうし、迷惑な主人公はどんな生死を共にするような、愛し愛されるような出会いがあっても、考えてるのは思い出のあの男への復讐だけっていう。
うーん、主人公は自分の名誉を回復するために復讐のことばかり考えているけれど、重大なことやドラマティックなことはいつも主人公そっちのけで周辺で起きているのだったー、という、陽気な話じゃないけれど、ややこしめのユーモアで読まされた。

国立近代美術館の「窓展」で知った窓学に興味をもって、監修の五十嵐太郎さんの名前をたよりに探してみた本。
これが窓展の展示で物足りないなと思った部分をいい感じに補完してくれた。
自分の興味があるのはとくに「窓のふるまい学」と「窓と街並の系譜学」なので、次はそれを読んでみようと思う。
『世界の美しい窓』は今まで知ってた建築も知らない建築もあり、窓をテーマに見ることで視点が変わってなかなかよかった。
アムステルダムのオクラホマっていう高齢者向けの集合住宅が面白かった。あとケ・ブランリ美術館とか壁に植生があるの好き。
アンリ・マティス設計でステンドグラスと壁画のあるロザリオ礼拝堂もいつか見てみたい。