大津と京都で展覧会

夜の京都国立博物館 美術館・博物館

秋、京都国立博物館では「国宝」展をやっていた。
会期は4期に分かれて、展示替えが多い。自分のコヅカイと余暇を考えると行けるのは1回……というわけで、事前に出陳リストを見ていつ行くか念入りに検討し、4期の、夜間開館のある金曜に行くことに決めた。

で、京都に行くんならと、同じ日に大津も行ってきた。
大阪駅からJRで大津京まで普通に切符を買うと、片道970円。これが金券ショップで大阪ー京都間の昼特切符を買っていくと、380円+240円で行ける。
電車に乗る時はこういう地味な節約をしてるんだけど、とうとう昼特が来年9月発売終了になるので、再来年以降は京都より東はどうやって行くことになるかなーと電車に乗りながら薄ぼんやり考えていた。

大津市歴史博物館「大津の都と白鳳寺院」展。
天智天皇の大津京の特別展と聞いたら、飛鳥好きとしては行かざるをえない。
見てて思ったんだけど、ここの展示はすごく繋がりがわかりやすい。遷都前の大津の様子がわかる遺跡が紹介され、同時期に都が置かれた飛鳥宮、難波宮が紹介され、大津遷都があって、誰もが知ってる壬申の乱へと、考古資料から時代を描き出していく。で、最後は天智天皇の血を引く桓武天皇が大津に建てた梵釈寺の話で終わる。
地域の歴史を日本史に結びつけて、興味が湧いて来るような導入がうまいというか。
この展示をここら辺の子が見たら、日本史が一気に身近に感じられるんじゃないかなー。
あと相変わらずキャプションのキャッチが面白い。誕生釈迦仏の並びも、ついつい食いつきたくなるんよな。

天智天皇発願の崇福寺。そのお寺の名前は今回やっと認識したけど、今はもうないそのお寺の旧仏が、園城寺の頭身が低い重文十一面観音だった(これは見たことあった)と知って、そうだったんだーとか。
瓦、金銅仏、塼仏、塑像断片などとにかく見応えがあった。
雪野寺跡の塑像の童子の頭部ってほんとに白鳳?と思うくらいリアルな造形で驚くけど、塑像片てすごいいっぱい見つかってるんだなーとか。御所市の二光寺廃寺と名張の夏見廃寺出土の塼仏がいっぱいあって、同型の塼仏があるというから地図で位置関係を見たり、西宮の黒川古文化研究所ってけっこう塼仏持ってるんだなーなんか興味ある展覧会の機会があったら行ってみようと思ったり。
橘寺の塼仏が美しくて、一気に飛鳥に気持ちがいってしまった。飛鳥行きたい。
石山寺の観音さんは痛々しくて見るとつらい。
妙伝寺の如意輪観音さんにも、阪大の金銅仏展以来の再会。ほぼ独り占めで、正直、この日京博でお会いしててもおかしくないよなーと思いつつじっくり拝見した。
考えてみれば今回見た資料はけっこう奈良国立博物館の2015年夏の「白鳳」展で見ているはずなんだけど、理解は今回の展示でより深まったと思う。ていうかこの知識を持ってもう1回「白鳳」展行きたいわ~。

京阪別所駅から乗り換えつつ東山駅に行き、少し歩いて細見美術館へ。
「末法」展。
カフェは何度か使ったことあるけど、実は中に入るの初めてだった。
末法の世に生まれた芸術を、ただその美によって鑑賞する。
心掴まれる美しさのものがいくつかあって、興福寺伝来井上馨旧蔵の弥勒菩薩とか、手のひらサイズの如意輪観音とか、工芸の極みみたいな光背とか…こりゃ快慶とかそういうクラスのお像を飾ってないと嘘でしょみたいな…魂抜かれそうになった。
頭部に牛頭がついてる牛頭天王坐像とかどこ伝来なんだろうなー。
あと意外に蔵王権現祭りでもあった。
それから応挙の驟雨江村図が見られたのが嬉しかったのと、金峰山伝来の優填王像のポーズが、あっこれ奈良博の走り大黒さん!というのが印象に残った。

細見美術館のカフェのケーキ

地下のカフェで国宝展に臨む前の腹ごしらえをして、バスで移動する。座れたのでよかったけど、東大路通を南下する路線はひどく混んでいたので、おけいはんまで歩いた方がよかったかなーともちょっと思った。いやでも体力温存したかったのでまあよいのだ。

京都国立博物館「国宝」。
入館の待ち時間はなかったが、中はほどほどに混んでいた。3階からまわる。
まあ何年かこつこつ博物館、美術館巡りしてると、けっこう見たことあるというものも多く、桜ヶ丘銅鐸を見ては結婚前に神戸市立博物館にデートで行ったなーとか、荒神谷遺跡はほんと衝撃的だったなーとか(最寄りの荘原駅で記念に取った乗車証明をまだ財布に入れてる)、福岡の新・奴国展ほんっとすごかったなーとか、一つ一つ見ては思い出が蘇ってくるって感じだった。
崇福寺の舎利容器がここで見られたのは、大津とハシゴしてよかったことだった。

4期にした決め手は唐招提寺の金亀舎利塔、大井戸喜左衛門、小野道風だったので、これらは特に丁寧に見てきた。
1階の仏像室には仁和寺の薬師如来がいらしてた。トーハクの仁和寺展にもお出ましになるらしいけど、多分日程が合わないので、今回はまたとない機会ということでここぞとばかりに間近で拝見してきた。素晴らしい檀像。

国宝ばかりが並んでいて、それなりに見ごたえはあるんだけど、しかしやっぱり展示にもうちょっと文脈がないと、展覧会としての面白みには欠けるかなーと贅沢なことを思いつつ帰宅。
京都は普段から常設が凄すぎるんだよな。