福岡市博物館と美術館

福岡市博物館ロビーに展示された「ゴリアテ」の模型 美術館・博物館

野暮用で福岡に行ったので、特別に何か見たいものがあったわけじゃないが、せっかくなので博物館と美術館にも寄ることにした。
今回の新幹線のチケットは旅行会社のプランで購入した。ひかりかこだま限定で、新大阪ー博多が7300円になるやつ。
10時過ぎに博多駅に着き、まずコインロッカーに荷物を預けて地下鉄に乗ろうとしたら、いきなり道を聞かれた。
旅先で道を聞かれることがよくあって、自分も旅行者なのになあと思いつつ分かる範囲で答えているが、今回なんとなく道を聞かれる理由がわかった。
旅先でも起き抜けの普段着で、基本的に荷物は預けて持ち歩かないから地元民にしか見えないんだ。
基本的に旅行の時に着る服は、長い移動時間をいかに楽に過ごすか、いかに歩きやすいかしか考えてないからなーなどと考えながら地下鉄で移動し、大学生にまぎれて福岡市博物館へ歩いて行った。

福岡市博物館ではジブリの特別展をやっていて、エントランスに「ラピュタ」に出てくる大きなゴリアテがありじわじわ動いていて、なかなか本格的だった。

ラピュタに出てくるゴリアテや飛空船などの模型

福岡市博物館はなんだかんだで年に1回か2年に1回くらい見に来ている気がするが、いつも特別展で力尽きていたので、この日は久しぶりに常設をじっくり見ることにしていた。

福岡市博の常設は、国宝の金印から始まる。
この金印まわりの展示が以前よりも充実しているように思ったが、九州国立博物館と勘違いしてるかもしれない。レプリカが置かれ、金の重さや粘土に押し付けてみた感じが実感できる。それから金印研究の歴史があり、本居宣長、上田秋成などの国学者の本が置かれていた。
金印の発見者は誰か?というところで、口上書の発見者は甚兵衛とされているが、仙厓の掛け軸に秀治と喜平と書かれているものがあって、甚兵衛とは実際の発見者とその地主という関係ではないかという説があるそう。
今年の春に江戸絵画の展覧会で何度も名前を目にした仙厓和尚が、遺跡の発掘の証人として挙げられているのを面白く思った。しかしここにその仙厓さんの絵の複製でもあったらさらによかったな。

福岡市内の弥生時代の遺跡はけっこう前になるがあちこちまわっていて、わりと知っていたつもりでいたが、久しぶりに見たら知らないことだらけだった。
板付遺跡の調査では、弥生時代の足跡が発見されたそう。そんなもの発掘現場で見たら感動して泣いちゃうかもしれないなー。

弥生時代の遺跡から発見された足跡

展示室の床にその足跡が縄文人のパネルから板付遺跡の模型に向けてあった。
展示に吉武高木遺跡や金隈遺跡展示館など、他施設への案内誘導があるのが良かった。密集する甕棺墓見たいぜ。

古代から現代、民俗資料まできっちり見て、続いて企画展へ。
企画展示室が数室あって、1室ごとに完結した展示をしている。
この時やっていたのは「古代と暦」、「老いの図像学」、「ゆるカワ日本美術」など。

「古代と暦」は庚寅(570年)銘大刀が中心。ここではレプリカだったが、現物は今年重文指定されて春はトーハクで、秋には福岡市博で展示されるそう。西区元岡G6号墳出土。
まあまずは古墳に、500年代に紀年銘があったのか、というところでびっくりする。
欽明天皇15年(554年)に百済から暦博士が派遣されたそうで、それまで日本には暦というものがなかったわけだから、国内で暦が使用されたほんとに最初期の例ということ。

展示はそれから大宰府に都と同じ漏刻があったという774年の続日本紀の記述があり、飛鳥の水落遺跡を思い出した。
それから南区の遺跡からは「五月」や「辰」の墨書銘の土器が多く出ているということ。
平安時代までに遣唐使が持ち帰ってきた5つの暦法があり、宣明暦は貞観4年(862年)から江戸時代まで823年使われていたということなどなど、それから暦や方位に関する民間信仰の展示もあり、一室ですごく充実していて面白かった。

月の満ち欠けや運行を表した図

あと福岡の算学者が作ったこの月の満ち欠けや運行を示した図、めちゃおしゃれなのでぜひ博物館グッズにしていただきたい。

老いの図像学ではお面や狩野永徳?の二十四孝図、国芳や芳年の浮世絵など。
ゆるカワ日本美術は先日見たへそまがり展と少しかぶるが、へそまがりが描き手側からに対して、ゆるカワは見る側からもっとゆるい、かわいいの意味をつきつめていった感じだった。
地元ってことで斎藤秋圃や仙厓が複数見られた。耳鳥斎の猫や

耳鳥斎の魚をくわえた猫の絵

若槻家伝馬書の馬のお医者さんがお殿様に献上したという馬の図は、馬のひらきみたいでくせになってくる。

馬の解剖図

博物館を出てバスで大濠公園方面に移動する。

ランチはリニューアルオープンした福岡市美術館のレストランに入ろうかと思っていたが、調べたら運営がホテルニューオータニ博多で九州国立博物館と同じだったので、まあそっちに入ったことあるからなーと思い、別の店にした。
護国神社の近くのアルバーカロというお店で、せっかくなのでコースランチ。

イタリアンランチ

久しぶりにいい温度のパスタ食べたなという感じでかなり美味しかった。

店を出て美術館の方へ歩いていくと、桜や藤やツツジが花ざかりで全力で春という感じだった。紫陽花までちょっと咲いていた。

福岡市美術館ではリニューアルオープン記念展をしていたので、せっかくなので特別展の方も入ってみた。
インカ・ショニバレはイギリスのアーティストで、アフリカ風プリントはオランダ製。
アフリカらしいという定義でくくられることの否定。ネルソン関連が2つ。歌うフランシスの回想。ネルソンは有名な絵画を再現するように何度も死の場面を演じている。

ハイビスカスの下に座る少年、蝶を駆るイベジ(双子の神)がよかった。

インカ・ショニバレの銃から桜が飛び出している作品

コレクション展はモダンアート多め。
草間彌生、シャガール、ミロ、ダリ、デルヴォーあたりの有名所がまず並ぶ。
モダンアートって見るときになんかしら情報を必要としてしまうのが自分の中で葛藤する…作者の名前とかキャプションとかの情報がまったくない状態で見て、なんらかの心が動かされる衝動がなければ、それって作品を見たといえるのかな、ってつい考えてしまう。
キャプションなんかで美術作品をより深く理解するための情報が得られるのは良いんだけど、美術館によって相性があるなーというのはあちこちまわっていて思う。

見て回った中ではアニッシュ・カプーア「虚ろなる母」と戸谷成雄の森が良かった。
あと伊奈英次のZONE、在日米軍の通信所を撮った写真。

東光院の仏像室はよりお堂らしくなっていた。内部から金剛力士像の背中の筋肉表現がライトアップで浮かび上がるのはとても推せる。

展示室が多くて動線がちょっとわからなくなっていたけど、スタッフがみんないい感じだったので気持ちよく過ごせた。また面白そうな展示があれば行こう。

地下鉄に乗って博多駅に戻り、電車でホテルの最寄駅まで移動。
今回の福岡行きは友人宅で少し手伝い作業があったため、滞在中はいろいろとごちそうでもてなしてもらって役得だったのだった。

福岡で食べたおいしいものコラージュ

生麩がおいしすぎて目覚めた。