天神祭と都市の彩り展と超絶技巧、未来へ!展

天神祭絵図 美術館・博物館

先日また大阪くらしの今昔館とあべのハルカス美術館をはしごして行ってきました。
阪急民なので、淡路乗り換えで天六の今昔館に行き、谷町線で天王寺に出られるのがけっこう周りやすい。

大阪くらしの今昔館「天神祭と都市の彩り」展

入り口には羽柴秀吉の大きな人形。2メートル近くあるかな?
衣装が豪華。

天神祭で元禄年間以降に御旅所周辺の町々で御迎え人形が作られ、祭りにあわせて街角に飾り立てられた後で氏子や崇敬者の仕立てた船に乗せられ、船渡御の一行を迎える役割を担っていたそうです。
江戸時代後期には50体を越えていたとか。
今回の展示はこの御迎え人形がメインとなります。

豊臣秀吉のほかに3体の人形が展示されていました。

中央は鬼若丸。武蔵坊弁慶の幼少の姿です。

大阪では牛若丸よりも鬼若丸の方が人気があったのかな。

吉川進の「夏祭り船渡御図」というかなり長い絵巻が展示室の両サイドにかけて展示されていました。
大正時代の船渡御の様子を描いたもので、手前には船にのった見物人と見られる人々、中央には御迎え人形をのせた船が連なり、遠景には多くの見物客と、当時の建築や橋が影のように描かれています。

描かれた鬼若丸。

大阪といえばこの方……なのかな?

この絵巻、かなりの長さがありつつ線が安定していて、人々の姿もいきいきしていて吉川進の名前は今回初めて知ったけれど、なかなかの描き手なのでは…?と思いました。

御迎え人形はだいたい当時人気の歌舞伎や浄瑠璃の登場人物だそうですが、中に大きな鯛がいたのが面白かったです。めでたいには違いない。

そして、渡御の中心である菅公をおまつりした御鳳輦。
実物の人形とこの絵巻を合わせて見ることで、当時の天神祭のようすがよくわかりました。

他にも天神祭や大阪の祭りにまつわる絵画が展示されていました。
鳥瞰図のような天神祭の図、華やかでとてもよかったです。
二代歌川広重の天神祭の図はちょっと船がまばらでさみしい感じだったかな。

前回の企画展の五井金水の作品も。えべっさんが屋根に上がっておる。

大阪天満宮所蔵の御迎え人形図の中で気になったのがこれ、「石橋」

顔がないところや、衣装の変わった感じ、女性の着物に見えるんだけど、胸元か帯の上かにホネみたいなものが見えて、どんなキャラクタなんだろう?と気になり、家に帰ってから検索してみました。
能の「石橋」は獅子舞らしく、ちょっと検索した感じでは登場人物の衣装と合わないかんじ。
これは個人的な宿題にしようと思います。

それからもうひとつ気になったのが、郷土研究上方の「大阪探墓號」

盂蘭盆会七墓巡りの図。七墓巡りはたぶん初めて聞きました。これもすごい面白そうなので調べてみようと思います。

お祭り気分を楽しんで、あべのハルカスに移動。
「超絶技巧、未来へ!」展。

以前大山崎山荘美術館で和巧絶佳展という現代作家さんの工芸展を見たのがかなりよかったので、今回も楽しみにしていました。
「明治工芸とそのDNA」ということで、現代作家さんの作品と共に、主に清水三年坂美術館の所蔵品の明治時代の超絶工芸が展示されていました。
撮影可の作品を少し撮らせてもらってきました。

これは大竹亮峯さんの「月光」
花びらは鹿角でできています。
そもそも鹿の角からこの繊細な薄さの花びらが生れるというのが驚きなのですが、さらにこれは花入れとなっていて、中に水を注ぐと花が閉じている状態からゆっくり花開いていく仕掛けがあるという……

説明を読んでも半信半疑だったのですが、隣にその様子が映像として流れていて、いやもうなんか神秘の域ですわ。人の手による神秘に驚かされました。

これは松本涼さんの髑髏柳。
表面のこのかんじ、この木目と形を損なわないままどこまで彫ったんだろうと思うと空恐ろしくなってきます。
すごい軽そうで、すごい重そう。

この方の「涅槃」という作品も印象的でした。
大輪の菊が切られ横たわっている姿。菊の頭が重そうで、いや見た目は軽いんだけど、存在にすごい重みがある。
なんか見た目の軽さと、そこから受ける印象の重さのバランスがばらばらで不思議になってくる。

こちらは福田亨さんの蝶。
この方は着色料を使わないことにこだわりがあるそうで、自然な木材の色を生かして作られているそうです。

あと撮影可の作品ではなかったので写真はありませんが、吉田泰一郎さんの夜霧の犬がとてもよかったです。
細部は植物や昆虫などから成っていて、総体として犬のかたちをとっている。

今回の展覧会、とてもそれぞれの作品が魅力的に見えるように展示されていて最高でした。
美しい工芸は影まで美しい。

明治のものは七宝、金工、漆工、陶磁、木彫り、刺繍絵画と展示されていて、良いものばかりでしたが、そのなかでも見られてうれしかったのは白山松哉の蒔絵と、あと米原雲海の木彫りの像が、ちょっと変わった感じで……竹取翁と「月」という作品があったんですが、なんていうのかな、墨でちょっと草体でさっと描いたような人を立体にしたら、もしかしたらこうなるんじゃないかな、みたいに感じました。

明治工芸もとてもよく、現代の工芸も負けていないというか、展覧会のタイトル通り今できることと、その先のビジョンがある作品でかなり満足度が高かったです。

時間に余裕があればもう1回見たいかも。