清水三年坂美術館から京都文化博物館へ

清水三年坂美術館 美術館・博物館

清水三年坂美術館で「帝室技芸員の印籠」展をやっていて、行く予定にはしていなかったのだが、柴田是真作の印籠が15個出ていると会期終盤に知って、ふいに行く気になった。

四条河原町からバスに乗るほどでもないので清水寺に向けて歩いていく。
天気がよく、観光客がそこそこ戻ってきているように感じたが、コロナ禍前に比べれば人が多すぎるというほどでもない、自分が遊びに行く立場としてはちょうどいいかなと感じる程度のにぎわい。

京都清水寺へ向かう道

桜の時期になったら、この道がどれほどの人で埋まるかな……。
暖かくなってきたので軽装で来たけれど、坂を歩いてのぼっていると汗ばむ陽気で、清水三年坂美術館に入ったときは涼しく快適に感じてほっとした。

まず先に2階に上がり、企画展を見る。
印籠をある程度の数をまとめて見ると、まずその形、いかにも手になじみそうな大きさと表面のなめらかさがとても良い。展示品に触ることはもちろんできないが、手にとった感じを想像してしまう。
印籠そのものも良いけれど、身につけるものとしてそれに組紐、玉や根付の組み合わせでさらに個性が出て面白みがある。
感じたことを一言で言えば洗練されているモノ、かなあ。形、色、デザイン性。

お目当ての柴田是真もたっぷり楽しんだ(象が特に面白かった!)が、個人的な好みとしては白山松哉が好き。
(到底買えはしないけれど、)自分が清水の舞台から飛び降りる気持ちで一生にひとつだけ買うとしたら、白山だな!
あと梶川の山水蒔絵がとても好きだったのと、大蛇の頭が上にちょこんと乗っている印籠が印象に残った。

印籠のこちら側と反対側を鏡で見せてくれる展示がよかった。こっち側とそっち側の世界はつながっていたり、表と裏で印象がらりと変わったり。
この手の中に収まるサイズに世界がひとつある、というのがとても魅力的に思う。

1階の常設にも柴田是真の蜘蛛の蒔絵箱があったり、すごくいい京薩摩があったりして、目の保養になった。

展示を見終わり、寄り道はせずに京阪の駅の方に降りていく。三条駅に移動し、次は京都文化博物館へ歩いて行った。

看板は原派なんだけど、まずは特別展、「知の大冒険─東洋文庫名品の煌めき─」展へ。
三菱の第三代社長岩崎久彌が設立した東洋文庫のコレクションが京都にお出ましと聞いて、東洋文庫は行ったことがないし興味を持って行くことにした。
この日はオーディオガイドをレンタル。
知の大冒険、つまり東洋への旅に見立てて貴重な書籍や地図などが展示されている。
今まで言葉だけ知っていたり、知っていそうでよくは知らなかったりしたものの実物を見て、最初から最後までなんだか興奮していたなあ……。

ダライ・ラマ13世が河口慧海に下賜したチベット大蔵経を見て、あっ河口慧海って、堺市の清学院にふらっと入ったときに、堺市出身の偉人やで!ってガイドのおっちゃんに説明してもらった人だ……みたいな繋がり方。そのときはわからなくても、後でわかる日がくる。
あと、今度上京したときに王羲之の蘭亭序を見に行こうと思っていたら、ここで見てしまったーとか。
あと科挙の答案ってたまーに見るけど、むっちゃくちゃ字がうまいよなとか。

たくさんの貴重書とともに、いろいろな理由や事情で異国を旅した人々の姿、そして書を集め、現在まで守り伝えた努力が印象に残った。

夜間開館の日だったのでなんとか間に合ったが、ふだんの日だったら見きれなかったな〜と思いつつ、企画展の階へ。
「原派、ここに在り」
原在中の絵はこれまでいくつか見たことがあるが、原在中とその子、子孫の原派の作品をまとめて見られてかなり見応えがあった。
原在中は山の描写が特に好きだけれど、この日は聖護院門跡の障壁画を仕立て直した馬図が見られたのがとてもよかった。
同じく聖護院門跡の花鳥図屏風はちょっと窮屈に見えたので、もう少し広げてもらって見たかったな。展示点数がけっこう多かったので、仕方なかったかもしれないけれど。
白地に白で描かれた禁中御産屏風、お産のときに産室を清浄にするために置かれたまじないの絵。
これは確か前に京都学・歴彩館で見たときは「伝・原在中」となっていたと思ったけれど、確定したんだろうか?それとも違う絵だったんだろうか。ちょっと細部までは覚えてなかったので歯がゆい。

体力的にも時間的にもここで限界となり、2階は見られず帰宅となった。